ホームページをAIで作ると失敗する？「楽して無料」の裏にある事業リスク

最近、ニュースやSNSで「AIを使えば、誰でも無料で、一瞬でホームページが作れる」という話題をよく耳にするようになりました。

「予算はないけれど、ホームページは欲しい」と考えている中小企業の社長にとって、これは魔法のような話に聞こえるかもしれません。制作会社に頼めば30万円、50万円とかかるものが、タダ同然で手に入るのですから、飛びつきたくなる気持ちは痛いほど分かります。

しかし、少し立ち止まって考えてみてください。あなたがホームページを作る目的は「作ること」そのものでしょうか？

違いますよね。そのサイトを見て、お客様が電話をかけてくる、求人の応募が来る、商品が売れる。そういった「結果」を出すことが目的のはずです 。

結論から申し上げますと、現在のAIツールで「適当に」作ったホームページでは、その目的を果たすことは極めて困難です。それどころか、後々になって「修正できない」「検索に出てこない」といったトラブルを招き、結局作り直すことになるリスクさえあります。

今回は、なぜAI任せのホームページ作成が中小企業にとって危険なのか、そして予算がない中で本当に選ぶべき「賢い選択肢」は何なのかを、実務の視点から正直にお伝えします。

AIは「御社の汗と涙」を知らない

AIで作ったホームページが「売れない」最大の理由は、デザインの良し悪しではありません。そこに掲載される「言葉（情報）」の質にあります。

「整った文章」ほど誰にも刺さらない

AIは非常に優秀です。プロンプト（指示）を一言入れれば、それらしいキャッチコピーや挨拶文を一瞬で生成してくれます。「お客様のニーズに寄り添い、最適なソリューションを提供します」「地域No.1の信頼と実績」といった、耳障りの良い言葉を並べるのは得意中の得意です。

しかし、この「耳障りの良い言葉」こそが落とし穴です。

これらは、どこの会社でも使える、いわば「平均点」の言葉です。あなたの会社のライバルも、全く同じような言葉を使っているかもしれません。お客様は、そのような金太郎飴のような定型文を見ても、心を動かされません。「ふーん、よくある会社だな」で終わってしまいます。

中小企業の武器は、平均点であることではなく、その会社固有の「色」や「物語」です。AIが書くきれいごとは、時に毒にも薬にもならない「ノイズ」になってしまうのです。

情報を入力するのは「あなた」である限界

「AIに詳しく指示を出せば、良い文章が書けるのではないか？」と思われるかもしれません。確かにその通りですが、ここで大きな壁があります。

AIは、あなたが入力した情報以上のことは出力できません。

あなたの会社には、創業時の苦労や背景があるはずです。長年積み上げてきた実績、支えてくれた社員一人ひとりの人となり、そして「あそこの競合には絶対負けたくない」という泥臭い対抗心。これからの未来図。

こういった膨大な「定性情報」こそが、お客様があなたの会社を選ぶ理由になります。しかし、これを全て言語化し、AIに正確に伝えることは、プロのライターでも骨が折れる作業です。

社長であるあなたが、自社の強みを完璧に整理できていなければ、AIにはゴミのような指示しか出せません。結果として、AIからはゴミのような（中身のない）アウトプットしか出てこないのです。これを「GIGO（Garbage In, Garbage Out）」と呼びます。

顧客は「機能」ではなく「物語」を買っている

特に中小企業の場合、お客様はスペックや価格だけで商品を選んでいるわけではありません。「社長の心意気に惚れた」「この担当者なら任せられる」といった、人間的な要素、つまり「物語」を買っているケースが非常に多いです。

AIには感情もなければ、実体験もありません。あなたの会社が流してきた「汗と涙」の重みを知らないAIに、人の心を動かす物語を描くことは、現時点では不可能です。そこにはやはり、人間が介在し、熱量を込める工程が不可欠なのです。

「作って終わり」は地獄の入り口

百歩譲って、文章は自分で書き直すとしましょう。しかし、AI作成ツールには、運用面や技術面でも、中小企業にとって致命的となり得るリスクが潜んでいます 。

そのサイト、Google検索に出てきますか？

ホームページは「公開（Publish）」しただけでは意味がありません。Googleの検索エンジンに登録（Index）され、検索結果に表示されて初めて、無人島から人がいる場所にお店を出したことになります。

AIツールで自動生成されたウェブサイトの裏側（ソースコード）は、プロから見ると非常に無駄が多く、汚い記述になっていることがよくあります。Googleは、こうした「低品質なコード」で書かれたサイトを嫌う傾向にあります。

最悪の場合、いくら待っても検索結果に表示されない、あるいは「スパムサイト」と判定されて圏外に飛ばされるリスクすらあります。検索エンジンに載らないサイトは、誰にも見つけられない「無人島の看板」と同じです。そこから集客することは不可能です。

再生成ボタンを押した瞬間、全てが消える

多くの簡易的なAI作成ツールは、「手軽さ」を優先するあまり、細かい修正や管理機能を犠牲にしています。

例えば、「デザインが気に入らないからもう一度生成しよう」とボタンを押した瞬間、あなたが苦労して書き直した文章や設定がすべてリセットされてしまうことがあります。バックアップ機能が不十分なツールも少なくありません。

また、将来的に「機能を追加したい」「デザインを大幅に変えたい」と思った時、AIツールの制限に縛られ、結局すべてを捨てて作り直す羽目になるケースも後を絶ちません。セキュリティ面でも、どこのサーバーを使っているか不明瞭なツールに、顧客情報を預けるのは経営リスクと言えます。

【結論】「とりあえずAI」の前に整理すべき「3つの選択肢」

では、予算がない中小企業はどうすればいいのでしょうか。「AIはダメ、制作会社は高い」では八方塞がりです。

実は、正解は一つではありません。あなたの会社の状況に合わせて、以下の3つから現実的な解を選んでください。

1. 本当に今、ホームページが必要ですか？

もし、あなたの目的が「地元からの問い合わせを増やしたい」だけなら、ホームページを作る必要すらないかもしれません。

例えば、運送業や建設業、店舗ビジネスであれば、Googleマップの登録（Googleビジネスプロフィール）を充実させる方が、ホームページを作るより遥かに早く、電話が鳴る可能性があります 。MEO対策と呼ばれるものですが、これは自分でも無料でできますし、AIサイトを作るよりよほど効果的です。

また、採用が目的なら、SNSで職場の雰囲気を動画で発信する方が、若者の反応が良い場合もあります。「なんとなくHPが必要」という思い込みを捨て、目的から手段を逆算してみてください。

2. 予算ゼロなら「Note」か「ペライチ」でいい

それでも「会社案内代わりのページは欲しい」という場合。中途半端なAIツールを使うくらいなら、「note」のようなブログサービスや、「ペライチ」のような実績ある簡易作成サービスを使うことをお勧めします。

これらのプラットフォームは、Googleからの評価（ドメインパワー）が最初から高く、検索にも引っかかりやすいです。デザインの自由度は低いですが、その分「中身（文章）」を書くことに集中できます。

見栄えの良いAIサイトより、社長の想いが熱く語られたnote記事の方が、よほどお客様の信頼を勝ち取ることができます。

3. 資産として持ちたいなら「WordPress」一択

もし、あなたが事業を長く続け、ウェブサイトを会社の「資産」として育てていきたいなら、やはり「WordPress（ワードプレス）」での構築をお勧めします 。

WordPressは世界で最も使われているシステムで、突然サービスが終了するリスクも低く、何より「自分の持ち物」になります。

「難しそう」と思われるかもしれませんが、最近は「SWELL」のように、専門知識がなくても直感的に操作できる優秀なテーマ（テンプレート）があります 。これを使えば、AIのような手軽さで、かつプロ仕様の拡張性とSEOへの強さを兼ね備えたサイトを、低コストで自作することが可能です。

アルウェブ流「失敗回避」チェックリスト

AIを使うにせよ、プロに頼むにせよ、自分で作るにせよ、絶対に外してはいけない工程があります。それは「自社の情報の棚卸し」です。

誰に、何を、どう伝えるか。この設計図がないまま家を建て始めても、必ず欠陥住宅になります。

アルウェブでは、ホームページ作成で失敗しないための「事前ヒアリングシート」を無料で提供しています 。

このシートの質問に答えていくだけで、あなたの会社の「強み」「ターゲット」「伝えるべきメッセージ」が明確になります。これを埋めてからAIに入力すれば、アウトプットの質は劇的に上がりますし、制作会社に渡せば「話が早い」と感謝されるはずです。

まずはツールに飛びつく前に、このシートを使って、足元の「武器」を確認してみてください。