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「とりあえず、そろそろホームページくらい作ろうか」
ふと、そんな言葉が口をついて出たことはありませんか?
同業他社の立派なサイトを見たとき。銀行の担当者に「御社、HPないんですか?」と不思議そうな顔をされたとき。あるいは、求人を出しても若い人がなかなか来ないとき。
「やっぱり、今の時代、ちゃんとしたホームページがないと恥ずかしいよな」 「周りもやっているし、とりあえず作っておくか」
その気持ち、痛いほどよくわかります。しかし、もしあなたが明確な戦略もなく、ただ「恥ずかしいから」「必要そうだから」という理由だけで制作会社を探そうとしているなら、どうか一度立ち止まってください。
私はこれまで、そうやって見切り発車で作られた中小企業のホームページが、完成からわずか数ヶ月で「誰にも見られないデジタル廃墟」になっていく姿を山ほど見てきました。
なぜ、決して安くはないお金をかけたホームページが、売上に1円も貢献しない「粗大ゴミ」になってしまうのか。そして、無駄な投資を避けて成果を出すために、本当は何から始めるべきなのか。
現場で見てきた生々しい真実と、失敗しないための「守りの手順」をお伝えします。
多くの経営者が陥る失敗パターンがあります。それは決して、制作会社のスキル不足だけが原因ではありません。実は、発注側である我々中小企業の「熱量の変化」に、最大の落とし穴があるのです。
ホームページを作ろうと思い立ったその瞬間、社長のやる気は最高潮です。「あんなデザインがいい」「こんな機能も欲しい」「社員の笑顔を載せたい」。夢は無限に膨らみます。
しかし、悲しいかな、本業が忙しい中小企業の社長にとって、その熱量は長く続きません。
だいたい2週間、長くても3週間。 月末の支払いや、急なトラブル対応、大口顧客のクレーム対応に追われているうちに、ホームページへの関心は急速に薄れていきます。
一方で、制作会社はサイトを作るために必死です。「社長、トップページの写真はどれにしますか?」「事業の強みを文章にしてください」「代表挨拶の原稿はまだですか?」と矢継ぎ早に連絡が来ます。
しかし、すでに熱の冷めた社長や、通常業務だけで手一杯の兼任担当者はこう思います。 「忙しいから後で」 「とりあえず、そっちでいい感じにしておいてよ」
こうして、確認待ちは積み重なり、制作会社も疲弊していきます。最終的にどうなるか。
「もう適当でいいや」という投げやりな指示でプロジェクトが進み、誰の魂もこもっていない、無難なだけの箱が完成します。納品された瞬間、社長は「あ〜、やっと終わった。いいサイトができたね」と満足して終わりますが、残念ながらそれが、そのサイトへの最後のアクセスになることも珍しくありません。
サイトが完成した後も、悲劇は続きます。通帳を見てみてください。毎月「保守管理費」として、数千円から数万円が引き落とされていないでしょうか。
しかし、その対価として具体的に何をしてくれているのか、即答できますか? 多くの場合、サーバーの更新ボタンを押すだけ、あるいは「セキュリティ対策」という名目で費用が発生していますが、毎月目に見える成果報告書が届くことはほとんどありません。
そして1年後、2年後。「そういえば、あのホームページから問い合わせなんて来たか?」とふと思い出した時には手遅れです。 「なんで成果が出ないんだ!」と制作会社を責めても、彼らは涼しい顔でこう返すでしょう。 「ご指示通りに作りましたし、記事の更新など、運用はお客様の責任ですから」
Webの仕組みを理解せず、世間体と雰囲気だけで作ったサイトは、何も生み出しません。ただ毎月お金を吸い取り続ける、負債になってしまうのです。
そうやって出来上がったサイトの中身を、客観的に見てみましょう。
「高品質なサービスを提供します」 「お客様第一主義」 「地域に愛されて◯◯年」
どこにでもある美辞麗句が並んでいませんか? そして写真は、素材サイトから持ってきた「握手をしている外国人」や「インカムをつけて微笑む女性オペレーター」。
これを見たユーザー、つまりあなたのお客様はどう思うでしょうか。 「なるほど、信頼できる会社だ」とはなりません。 「実態がよくわからないな。失敗したくないから、やっぱりAmazonで買おう」「大手の◯◯にお願いしよう」と、安心できる他社へ流れていくだけです。
本能的に「人の気配」がしないサイト、信頼できないサイトには、顧客も集まらなければ、求職者も寄り付きません。
では、我々はどうすればいいのか。私がおすすめしているのは、まずは複数ページの立派なホームページ(HP)ではなく、1枚完結の「ランディングページ(LP)」から始めることです。
Webでモノやサービスを売るために、最も重要な一丁目一番地は、「顧客理解」です。
誰が、何を、どんな用途で求めているのか。 競合と比較して、自社のどこが勝っているのか。 これらが明確でなければ、どんな立派なサイトを作っても砂漠に水を撒くようなものです。
しかし、顧客理解は株価の予測と同じで、会議室で腕を組んで考えているだけでは当たりません。実際に市場に出してみて、反応を見るしかないのです。
ここでLPの強みが活きます。 一般的なホームページを作ってSEO(検索エンジン対策)で集客しようとすると、結果が出るまでに早くても半年から1年はかかります。しかも、その間ずっと孤独に記事を書き続けなければなりません。
一方、LPを作ってWeb広告を出せば、極端な話、翌日からアクセスが集まり始めます。 「このキャッチコピーはクリックされるか?」 「この価格で申し込みが入るか?」 といった仮説の検証、つまり「答え合わせ」が、圧倒的なスピードで可能になります。
もちろん、LPを作れば魔法のように売れるわけではありません。ですが、半年かけて作った数百万円のHPが「大ハズレ」だった時のリスクを考えれば、LPでのテストは非常に理にかなっています。
「広告はお金がかかるから無理だ」と思っていませんか?実は、そんなことはありません。 InstagramやFacebookなどのSNS広告、あるいはGoogleのリスティング広告は、最低出稿金額の縛りがほとんどありません。
例えば、1日500円や1000円といった「ランチ代」程度の予算からでも配信をスタートできます。 「まずは3万円分だけテストしてみよう」という使い方ができるのがWeb広告の魅力です。いきなり新聞広告のような大金をかける必要はないのです。
また、作りたてのホームページに自然に集まってくるアクセスの正体をご存知でしょうか。その多くは、顧客ではなく「問い合わせフォーム営業」をしてくる業者です。
Googleアナリティクスを見て「アクセスが増えた!」「コンバージョン(問い合わせ)があった!」と喜んでいたら、中身はすべて「動画作りませんか?」「SEO対策しませんか?」という売り込みメールだった。これは笑い話ではなく、よくある話です。
LPを使って、広告でターゲットを絞り込んで集客しない限り、本当のデータの分析すらままならないのが現実なのです。
「LPがいいのはわかった。でも、営業電話で『安くHP作ります』って言われてるんだけど…」 そんな方もいるかもしれません。ここで防御策をお伝えします。
制作会社もビジネスです。ボランティアではありません。価格が安いということは、それだけ「あなたの会社のために使う時間を削る」ということです。
最近はAIを使って効率化している会社もありますが、AIはあなたの会社の創業の想いや、現場の職人のこだわりまでは知りません。 あなたのビジネスを深く理解し、それを言葉にするスキルがなければ、AIを使おうがテンプレートを使おうが、人の心には響きません。「安い」には必ず理由があります。
もし、あなたがホームページを作る目的が「銀行融資のためにとりあえず必要」「名刺にURLを載せたいだけ」なら、制作会社にお金を払う必要すらありません。
Wixやペライチ、Canvaといった無料〜格安で使えるツールで十分です。あるいは、noteやX(旧Twitter)、Instagramのアカウントを開設するだけでも、会社名で検索した時にヒットさせることは可能です。
「名刺代わり」のサイトに、月額数万円のリース料や管理費を5年も払い続けるのは、ドブにお金を捨てているのと同じです。そのお金があるなら、社員に還元するか、新しい工具を買ったほうがよっぽど会社のためになります。
私は「一生ホームページを作るな」と言っているわけではありません。以下の3つの条件が揃った時こそ、しっかりとした予算を投じて本物のホームページを作るタイミングです。
「なんとなく」ではなく、「採用を年間〇人増やしたい」「この商品を月〇個売りたい」という数字の目標があること。これがなければ、デザインの良し悪しだけで揉めて終わります。
LPやSNSでの運用を通じて、「ウチの強みはここだ」「こういう客層に刺さる」という確信(勝ち筋)が得られていること。これがあれば、HPのコンテンツ作りで迷走しません。
作って終わりではなく、更新や改善を担当できる人がいるか。そのための予算や時間は確保できているか。
銀行取引や取引先への信頼など、外部的な要因もきっかけにはなりますが、それを目的にしてしまうと「手段の目的化」が起きます。あくまで自社の事業戦略として、ゴーサインを出せる状態になってから動き出してください。
とりあえずHPを作ろうとしているなら、一旦ストップしてください。 その熱量は2週間で冷め、残るのは管理費だけの負債です。
集客したいなら、LP(ランディングページ)で実験する。 1日数百円の広告費で、最速で「顧客理解」を進めましょう。
名刺代わりなら、自作する。 無料ツールやSNSで十分目的は果たせます。
中途半端な投資で「死んだホームページ」を量産するのは、今日で終わりにしましょう。
もし、「自分たちの場合はLPがいいのか、それとも自作でいいのか判断できない」「悪質な業者に捕まっていないか不安だ」という場合は、アルウェブまでご相談ください。 業者への発注前に、セカンドオピニオンとしてあなたの会社を守るアドバイスをさせていただきます。